破産手続開始が認められるのはどのような場合ですか?

破産手続開始の原因

破産手続は、債務者の財産状態が悪化し、債務者の総財産をもって債権者間に公平かつ平等な弁済を図るべき場合に開始される手続であり、破産手続開始の原因とは、その開始の要件とされる債務者の財産状態の悪化の事由である。
自然人、法人など全ての債務者に共通する破産手続開始の原因として「支払不能」があり(破産法15条1項)、その支払不能を推定するための事実として「支払停止」がある(同条2項)。
また、(存立中の合名会社・合資会社を除く)法人については、「債務超過」も破産手続開始の原因とされている(破16条)。

支払不能と支払停止

(1) 支払不能

支払不能とは、債務者が支払能力を欠くためにその債務のうち弁済期にあるものについて一般的かつ継続的に弁済することができない状態をいう(破2条11項)。

(a)即時に弁済すべき債務を弁済できないこと
(b)一般的かつ継続的に弁済することができない状態

(2)支払停止

支払停止とは、債務者が、支払能力を欠くために一般的かつ継続的に債務の支払をすることができないと考えて、その旨を明示的又は黙示的に外部に表示する行為をいう(判例)。
支払停止は、それ自体が破産手続開始の原因ではないが、支払不能を推定させる(破15条2項)。したがって、支払停止が認められる場合は、債務者などが支払不能の不存在を証明しない限り、破産手続開始の原因が認められることになる。

(a)一般的かつ継続的な支払能力の欠乏
(b)明示的又は黙示的に外部に表示する行為

※ 自然人で多い例は、倒産手続を受任した弁護士が、債務者の代理人として債務者において今後倒産手続をとる予定であることを理由に弁済を停止する旨の通知(受任通知または介入通知)を債権者に送付することである。
※ 法人で多い例は、営業の廃止(閉店等)や、手形が6か月以内に2回手形交換所で不渡りとなって銀行取引停止処分を受けることである。
※ 債務者が弁護士との間で債務整理のために破産手続開始の申立ての方針を決めただけでは支払停止とはいえない(判例)。

(c)弁護士が債務整理開始通知を送付する行為

債務者の代理人である弁護士が債権者一般に対して債務整理開始通知を送付する行為は、(同通知に自己破産を予定している旨が明示されていなくても)破産法162条1項1号イ及び3項にいう「支払の停止」に当たる(判例)。

(d)手形の不渡りと支払停止

手形の不渡り自体は特定の手形債務についての1回的な不払いであるが、資金繰りができなかったことを意味し、一般的かつ継続的に債務を弁済できないことを表示したものということができる。

債務超過

債務超過とは、債務額の総計が資産額の総計を超過している状態をいう。
法人の場合は、支払不能とともに債務超過が破産手続開始の原因とされる(破16条1項)。もっとも、合名会社・合資会社では無限責任社員の人的信用が会社の弁済資力を構成するから、その存立中は、債務超過は破産手続開始の原因とされていない(同条2項)。

条文

(破産手続開始の原因)
第十五条 債務者が支払不能にあるときは、裁判所は、第三十条第一項の規定に基づき、申立てにより、決定で、破産手続を開始する。
2 債務者が支払を停止したときは、支払不能にあるものと推定する。

(法人の破産手続開始の原因)
第十六条 債務者が法人である場合に関する前条第一項の規定の適用については、同項中「支払不能」とあるのは、「支払不能又は債務超過(債務者が、その債務につき、その財産をもって完済することができない状態をいう。)」とする。
2 前項の規定は、存立中の合名会社及び合資会社には、適用しない。

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