個人の自己破産は、これまで説明してきました会社の自己破産とほぼ同じです。
つまり、破産手続開始決定時点において債務者が有する資産を、裁判所が選任する破産管財人が換価し、金銭を債権者に平等に配当して、その結果残った債務について消滅させる手続です。
簡単に言いますと、経営者が個人として有する現金・預貯金・不動産・自動車・生命保険などを破産管財人が管理・処分してお金に換えて、それを債権者に平等に配当し、残った債務は帳消しになるという手続きです。
借金がゼロになるのは、債務整理手続きのなかでも破産手続きのみで、破産手続きは最も強力な効果があります。
※手続きについては、会社と同時に個人の自己破産の申立をした場合は会社破産手続きと同時に進行しますので、■会社の自己破産の手続き・流れは?をご確認ください。
個人の自己破産をした場合でも、全ての財産が処分されるわけではありません。以下のものは「自由財産」として経営者個人のお手元に残すことができます。
(1) 99万円以下の現金
(2) 残高20万円以下の預貯金
(3) 見込額20万円以下の保険解約返戻金
(4) 処分見込額20万円以下の自動車・バイク
(5) 居住用家屋の敷金債権
(6) 電話加入権
(7) 支給見込額8分の1相当額が20万円以下である退職金
(8) 支給見込額8分の1相当額が20万円を超える退職金の8分の7相当額
(9) 家財道具
(10) 差押えを禁止されている動産・債権
破産手続開始決定の後で得た給料・収入などの現金は、99万円を超えるかどうかに関係なく、すべてお手元に残すことが可能です。
会社の債務を経営者ご自身のお金で返済せず、99万円までの現金をお手元に残して生活の再出発を可能にするために、できるだけ早い段階でタキオン法律事務所の無料相談をご利用ください。
「家族に知られずに個人の自己破産はできますか?」というご質問を受けることがありますが、ご家族が依頼者の方の保証人などでない限り、ご家族に知られずに個人の自己破産ができることも多いです。
「個人の自己破産手続きが終わるまで他の会社で働くことはできないのですか?」というご質問を受けることがありますが、問題なく働けます。
「自分が個人の自己破産をしても、妻に借金の請求がいくのでは?」というご質問を受けることがあります。
奥様が保証をしている場合は奥様も請求されますので、奥様も一緒に自己破産する必要があります。それは離婚をしても同じです。
奥様が保証をしていない場合は請求されません。
なお、ここでは管財事件についてのみ書いており、同時廃止事件については触れません。会社の破産に伴う経営者の個人破産では(ほぼ全ての場合)同時廃止事件とはならず、管財事件として扱われるからです。
※同時廃止事件(同廃):裁判所が破産管財人を選任せずに、破産手続開始決定と同時に破産手続きが終了し、以後は免責手続きに進む事件類型です。ここで「廃止」は「終了」を意味します。
<免責不許可事由>
個人の自己破産の場合、「免責不許可事由」というものが定められています。免責不許可事由に該当した場合は免責(債務の帳消し)が認められないことがあります。
(ただ、現実には、よほどの悪質な財産隠しがあるような場合を除いて、裁判所の裁量によって99%の個人破産手続きで免責が認められます。)
(1) 浪費または賭博その他の射幸行為をしたことによって著しく財産を減少させ、または過大な債務を負担したこと
(2) 破産手続の開始を遅延させる目的で、著しく不利益な条件で債務を負担し、または信用取引により商品を買い入れてこれを著しく不利益な条件で処分したこと
(3) 特定の債権者に特別の利益を与える目的または他の債権者を害する目的で、債務者の義務に属しない担保の供与または債務の消滅に関する行為をしたこと
(4) 破産手続開始の申し立てがあった日の1年前の日から破産手続開始決定があった日までの間に、他人の名前を勝手に使ったり、生年月日、住所、負債額および信用状態等を誤信させて、借金など信用取引をしたこと
(5) 過去7年内に免責決定の確定、給与所得者等再生における再生計画の遂行、ハードシップ免責決定があったこと
(6) 商業帳簿等の隠蔽、偽造または変造があったこと
(7) 虚偽の債権者名簿を提出し、説明義務違反、重要財産開示義務、免責調査協力義務違反があったこと
(8) 債権者を害する目的で、破産財団に属する財産の隠匿、損壊、不利益な処分その他価値を不当に減少させる行為をしたこと
<非免責債権>
以下の債権は、「非免責債権」と言って、個人の自己破産手続きによっても免責はされません。
※これらのうち、最も多いのは「(1)租税等の請求権(つまり滞納税など)」です。固定資産税、住民税、軽自動車税、国民健康保険税などの税金を滞納している場合、これら滞納税については自己破産しても免責されません。
ただ、例えば住民税を滞納している場合、督促状や滞納通知を送付してきた市役所や区役所の担当部署に事情を説明すると、多くの場合は分割払いに応じてくれます。
(1) 租税等の請求権
(2) 破産者が悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権
(3) 破産者が故意または重大な過失により加えた人の生命または身体を害する不法行為に基づく損害賠償請求権
(4) 夫婦間の協力・扶助の義務にかかる請求権
(5) 婚姻費用分担請求権
(6) 子の看護に関する義務にかかる請求権
(7) 扶養の義務にかかる請求権
(8) 雇用関係に基づいて生じた使用人請求権および使用人の預り金返還請求権
(9) 破産者が知りながら債権者名簿に記載しなかった請求権(債権者が破産手続開始決定のあったことを知っていた場合は除く)
(10) 罰金等の請求権
会社破産と同様、個人破産の場合も「介入通知(受任通知)」を送った後、例えば6ヶ月や1年も破産申立をしないと、債権者も連帯保証人である経営者に訴訟を提起して強制執行などしてくることがありますので、経営者の方には早期の自己破産申立のために迅速なご協力をお願いします。
<経営者個人所有の不動産の売却について>
資金繰りに窮した経営者の方は、ご自身が所有する不動産を売却してその売却代金を事業資金に回すということをよくなされます。
しかし、ちょっとお待ちください。
不動産を売却すると譲渡所得税が発生し、その後に個人破産をした場合でも譲渡所得税は残ったままになってしまいます。
それよりも、破産手続の過程で不動産を売却した場合には譲渡所得税はかかりませんので、その方が後の生活が楽になります。
※国税庁ホームページ
(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3105.htm)の4(2)
資力を喪失して債務を弁済することが著しく困難な場合に、強制換価手続(滞納処分や強制執行、担保権の実行としての競売、破産手続等)により、資産を譲渡したことによる所得及び強制換価手続の執行が避けられないと認められる場合における資産の譲渡による所得で、その譲渡代金の全部が債務の弁済に充てられた場合には、譲渡所得税はかからない。
もっとも、所得税法第64条第2項で非課税の特例が定められていますので、詳細については顧問税理士などにご確認ください。
※国税庁ホームページ
(https://www.keisan.nta.go.jp/r1yokuaru/cat2/cat21/cat218/tokurei/jobunjun/shotokuzei64_2.html)
現実に債権者から訴状が届いたり、給料が差し押さえられたような場合は、一刻の猶予を争います。直ちにタキオン法律事務所にご相談ください。タキオン法律事務所では無料相談を実施しています。
※ お問い合わせの前に必ず『法律相談の流れ』をご確認ください。
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