裁判所が関与せず、会社と債権者とが個別的または集団的に任意交渉をし、弁済額や弁済方法につき債権者全員の同意を得て、会社を清算または再建する手続きです。
法的整理(会社破産・特別清算・民事再生・会社更生)の場合はすべての債権者を対象に債務を整理しなければなりませんが、私的整理ではそのような制限はありません。例えば、再建型私的整理の場合、取引先の債務はそのままで、金融機関の債務だけを整理することも可能です。
法的整理とは異なり、手続きが法律により定まっているわけではないことから、債権者との合意があれば自由に決めることができます。また、そのため、法的整理よりも短時間で済むことがあります。なお、「私的整理ガイドライン」では3ヶ月程度で整理を終了することが予定されています。
これが私的整理の最大のデメリットです。法的整理の場合は一定数の債権者の同意で手続きが利用できますが、私的整理の場合は債権者全員の同意が必要で、一人でも反対すれば利用ができません。よって、債権者が多数の場合や強硬に反対する債権者が一人でも存在する場合は利用できません。
そのため、強制執行や弁済請求をされた場合に対抗することができません。
裁判所の関与がないため、整理案について一部の債権者が有利な条件になっていないかなど疑問が生じるような場合もあります。
例えば民事再生によった場合は債権者が損失分を貸し倒れとして損金算入でき、債権者にとってメリットがありますが、私的整理の場合は法人税基本通達の要件を充たすかどうかが明確なケースもあります。
(もっとも、「私的整理ガイドライン」「整理回収機構(RCC)スキーム」「中小企業再生支援協議会スキーム」による場合には、債権者が行った債権放棄・債務免除による損失につき無税償却が認められます。)
法的整理と異なり、債権者との個別交渉が必要となり、また、再建型の場合には詳細な資産調査(デューデリジェンス)が必要になり、弁護士費用が会社破産の場合の2~10倍になることもあります。
再建型の私的整理には、「私的整理ガイドライン(私的整理に関するガイドライン)」に沿って行う整理手続があります。同ガイドラインは公平で透明性のある私的整理を行うためのルールです。
法的拘束力はありませんが、金融機関等の主要債権者及び対象となる債権者、債務会社、その他の利害関係人によって自発的に尊重・遵守されることが期待されています。
もっとも、経営難にある会社の全てが、同ガイドラインの適用を受けられるわけではありません。ガイドラインが想定する会社の再建は、法的整理手続きによったのでは事業価値が著しく毀損されて再建に支障が生じるおそれがあり、私的整理によった方が会社と債権者の双方にとって経済的に合理性がある場合に限定されています。具体的には以下が要件となっています。
過剰債務を主因として経営困難な状況に陥っており、自力による再建が困難なこと。
事業価値があり(技術・ブランド・商圏・人材などの事業基盤があり、その事業に収益性や将来性があること)、重要な事業部門で営業利益を計上しているなど債権者の支援により再建の可能性があること。
会社更生や民事再生などによる法的整理手続を申し立てることにより当該債務者企業の信用力が低下し、事業価値が著しく毀損されるなど、事業再建に支障が生ずるおそれがあること。
私的整理手続により再建するときには、破産的清算はもとより、会社更生手続や民事再生手続などによるよりも多い回収を得られる見込みが確実であるなど、債権者にとっても経済的な合理性が期待できること。
※ お問い合わせの前に必ず『法律相談の流れ』をご確認ください。
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