個人債務者の返済負担の圧縮と返済計画の立案とを支援する法的整理手続きです。
個人再生手続きには、「小規模個人再生」と「給与所得者等再生」がありますが、後者は使い勝手がよくなく、返済額も高額になりがちなため、ここでは一般的に利用される「小規模個人再生」について述べます。
「債務の圧縮」ですから、個人破産とは異なり、債務はゼロにはなりません。例えば、会社の債務額が4,000万円でその全額につき経営者が連帯保証をしている場合、その連帯保証分の返済額は400万円になります。
この400万円というのは、最低弁済基準によって決まります。
債務額 | 最低弁済額 |
---|---|
~100万円 | 債務額そのまま(0~100万円) |
100万円~500万円 | 100万円 |
500万円~1,500万円 | 債務額の2割(100~300万円) |
1,500万円~3,000万円 | 300万円 |
3,000万円~5,000万円 | 債務額の1割(300~500万円) |
上記例では、(連帯保証分の)債務額が4,000万円ですので、「1割」で400万円ということになります。
さらに、例えば、連帯保証債務4,000万円の他に経営者の方が個人的に消費者金融会社や親戚から600万円の借金をしている場合、4,600万円の「1割」の460万円を返済することになります。
住宅ローン債務を除いた債務額が5,000万円を超える場合、個人再生手続きは利用できません。
※上記債務額には住宅ローン残債務を含みません。住宅ローンは全額返済していく必要があります。
例えば、住宅ローンの残債務額が3,500万円、その他の債務(会社の債務の連帯保証分や消費者金融の債務)が4,000万円あり、 持ち家は残したいが、債務4,000万円全額を返済できる見通しが立たない場合、住宅ローン残債務3,500万円についてはそのまま全額支払い続け(または、リスケジュールにより期限を延長して毎月の返済額を少し減らして全額を支払い続け)ながら、その他の債務4,000万円については400万円のみを3年~5年の間に返済することで残額3,600万円は免除してもらうというのが個人再生手続のイメージです。
個人再生には、清算価値保障原則というものがあります。これは、再生計画に基づく弁済総額は、破産の場合の配当額(清算価値)を上回るものでなければならないという原則です。
例えば、先の例のように(住宅ローン残債務額を除いた)債務が4,000万円の場合、最低弁済基準による返済額は400万円になります。しかし、個人再生手続開始決定の時点で債務者が持っている資産(現金・預貯金・保険解約返戻金・自動車など)が500万円あったような場合、最低弁済額の400万円ではなく500万円を返済しなければなりません。
このように、個人破産とは異なり、個人再生では債務はゼロにはなりません。にもかかわらず、個人破産ではなく個人再生を選択するのは、以下の理由によります。
個人破産の場合は資産を処分する必要があるため、(賃貸でない)自宅を失うことになります。
これに対して、個人再生の場合は自宅を残すことができます。住宅資金特別条項により住宅ローンだけは全額返済して、その他の債務のみをカットするからです。
個人破産をすると一定の資格が一定期間(約3~4ヶ月間)制限されます。主なところでは、保険外交員、警備員、宅地建物取引主任者、旅行業務取扱管理者、証券外務員などがこれに当たります。
これに対して、個人再生ではこのような資格制限がありません。
以上のように、住宅を残したい方、職業上の資格制限を避けたい方が、個人破産ではなく個人再生を選択することが多くなっています。
※破産と取締役について
従来は株式会社の取締役の欠格事由として破産がありましたが、2006年以降この制限はなくなりました。ですので、破産しても「数ヶ月間取締役になれない」ということはありません。
ただ、民法上は依然として破産が委任契約の終了事由となっていることから、破産により取締役をいったんは自動的に退任することになり、その後株主総会で選任される必要があります。
この点で、会社の自己破産と経営者個人の自己破産を同時に申し立てる場合、「他の会社の取締役にもなっていて、そちらの取締役は続けたい」という場合には個人破産を避けて個人再生を選択する必要があります。
個人再生には個人破産における免責不許可事由の該当するものがないというのも両者の違いの1つです。
しかし,個人破産では免責不許可事由があっても裁量免責が認められるのが一般なので,それほど大きな違いとはなりません。
時々、「破産のイメージが嫌だ」という理由だけで個人再生を選択したいという方がいらっしゃいます。
しかし、個人破産と個人再生のいずれを選択してもその事実が戸籍・住民票・身分証明書に記載されたりすることはありませんし、選挙権もなくなりませんので、あくまでイメージの違いのみということになります。
住宅を残したい、資格制限を避けたい、という理由以外では個人再生ではなく個人破産を選択した方が、経営者の方の生活を再出発する意味では明らかに有利となります。
※ お問い合わせの前に必ず『法律相談の流れ』をご確認ください。
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